鳥居の耐震

先日、取引先から石鳥居の耐震診断や補強が可能か、問い合わせがありました。

設計図書や施工図も無く、外観しか情報がありません。形状から、片持ち柱構造である架構の抵抗メカニズムは、地中部分の回転、転倒抵抗が支配的で、その部分の現況を調査しないとなんとも、という返答をしました。

そもそも、石材は主に組積造(メーソンリー構造)で使用される構造材料であり、抵抗要素が壁などの面内のせん断抵抗である材料に対して、ラーメン架構形式(主に曲げに対して)のメカニズムが成立しうるのかが疑問です。

柱脚部分はおそらく、基礎にほぞ穴を設け、柱を落とし込むような施工が考えられますが、外観だけの情報では判断が出来ません。

震災では倒壊例も多く、所有者の心配も分かるだけに、なんとかしたいところです。私たちの意見は伝え、連絡待ちになっています。

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話は変わりますが、先日の製品検査の際、工場へ向かう道に、なんと柱の中間部を鋼板巻きしている鳥居を偶然みつけ、思わず写真を撮ってしまいました。

上下の柱の色が違うので、震災で補強部分で座屈し、改修する際に鋼板で継いだのでしょうか。上記に書いたように、力学的には柱脚部分に破壊が集中するはず。中間部とは???となるばかりでした。柱脚部分には何らかの補強材(鉄筋のような)が入っているのかもしれません。断面性能の切り替わるところが弱点になったのでしょうか。

ファスナー部分。柱と鋼板の隙間には無収縮モルタルが圧入され、一体となっています。モルタルから染み出したと思われるエフロレッセンスが、残念ながら美観を損ねていました。

株式会社エスアンドエフ 一級建築士事務所

建築構造設計・監理・耐震診断・耐震改修