現場見学

 先日、私が所属するJSCA(日本建築構造技術者協会)のイベントで、私が毎日通勤で前を通っている「阪神阪急梅田1丁目1番地」の工事現場の見学会があり、タイミング良く参加できた。

 1期の低層棟は2018年に竣工し、既に百貨店として営業中、現在、2期の高層棟(38階建)を建設中で22階を施工中。1期も合わせた工期は8年(24時間稼働)で2022年竣工予定とのこと。

 見所は沢山あったが、構造設計者として気になっていたのは、低層棟と高層棟を一体で設計されていて、建物配置的に重量偏心しているので、低層部も含めた平面では強烈な捻れ挙動が生じるという事。

 以前雑誌で読んだが、高層棟を胴体、低層棟を本体のしっぽにたとえた、ビーバーテイル制振という考え方があって、ビーバーやリスなどの動物は大きな尾を持っており、胴体と尾は互いにバランスをとりながら動作するように、固有周期の違いを利用して、捻れ挙動を逆手にお互いのバランスを取り合う相互作用に期待したと。解決した理論がシンプルで説明もしやすく、おもしろい考え方だと思った。

 設計者によると、基本設計でもEXP.Jで分棟されていた計画を何故、一体にしたのか。という根本的なところは、コスト面も含め、よく他から突き上げを食らうらしい。これには、大阪梅田のシンボリックな空間をぐるりと覆うファサードデザインの一体性は施主要望でもあったとか、結果的には1期、2期を通したコストはそれほど他の計画と変わらないとか、説明を受けたが、すこし苦々しく話されていたのが印象的だった。


たくさん写真や動画を撮ったが、残念ながら見学時の工事写真はウェブアップが禁止されており、通勤途中で撮った、現在(2020/11)の外観写真を上げておく。

株式会社エスアンドエフ 一級建築士事務所

建築構造設計・監理・耐震診断・耐震改修